ロハス・メディカル12月号の記事です!!



「きっかけはいつも、患者さんがくれるんです。」


 こんにちは! 今回は、僕にMedicina Nova(メディキナ・ノア、新医学)の必要性を気づかせてくれた患者さんの一言をご紹介します。


 と、その前に、まず僕が主宰する患者会「ももの木」の立ち上げの話から。2000年、僕は「院内の環境を変えたい」という一人の患者さんに出会いました。ちょうど僕も、患者さんたちと集まれる場があったらいいな、と考えていた折。「じゃ、一緒に患者会をやってみよう」ということになったのです。僕が「病気退治の桃太郎」から「もも先生」と呼ばれていたのにちなみ、名称は「ももの木」に。


 当初多かったのは、「何をする会ですか?」という質問です。でも、それはあえて決めたくなかった。まずは〝集まる〟こと。そのシンプルな思いを貫くべく、第1回交流会は居酒屋で開催し(当時は呼び方も「飲み会」)、10人ほどで食べて飲んで喋って、本当に楽しい時間でした。


 それからというもの、交流会はもちろん、その外でも患者さんと会って話をし、一緒にドライブや旅行に出かけ、メールもたくさんしました(6年間では7000通以上!)。自然と、以前よりもざっくばらんに話を聞かせてくれるようにもなりました。僕は「へー、そうなんだー」と教えられることばかり。それでも、こうした経験を通じて患者さんやご家族との垣根が低くなったおかげで、患者さんの本音を知ることができた、そう思いこんでいたのです。


 しかし、僕にとっての事件が起きたのは、そんな頃のこと。患者さんがぽろっとこぼしてくれた一言でした。
「先生、患者ってね、医師に気をつかって、看護師さんに気をつかって、家族や友達にも気をつかってるんだよ。だから本当の私なんて誰も知らない。一番つらい患者が、どうして一番気をつかってるんだろうね?」


 大ショック。ひとりよがりだった僕の頭をガツンと一発、目を覚まさせてくれたのです。「患者さんの気持ちは患者さん自身にしかわからない」――Medicina Novaの原点と向き合った瞬間でした。